物語の作り方 ガルシア・マルケスのシナリオ教室 を読む

2020-12-02ガルシア・マルケスのシナリオ教室,物語の作り方,読書,読書感想

お話の作り方的な本を読んでいて。

それはこれで3冊目となる。

いろいろ参考になったのだが、この本だけは毛色が違う。

本書はガボ(ガルシア・マルケス)の教室で

実際に行われていたブレインストーミングの記録なのだ。

※ブレインストーミングについて知らない方は調べたし

プロの作家達がシナリオの為だけに参加する

思考の試行の至高のブレインストーミング

興味がわかないわけがない。

漫画や小説など、物語の制作は一人静かに行うものだと思っていた

自分には衝撃的な内容であった。

テーマとして、制作過程にあるストーリーを語る者を決める

それを聞いた者達が意見を述べ、あらゆる方向を模索する

この本において、注目すべきはやはりガボ。

おぼろげだがすでに形ができている

完成されかけているストーリーをガボは壊そうとする

そうする事で新たな局面を導き出そうとするのだ

「ここまできてそんな展開はないだろ!」

という意見をぶっこんでくるガボ。

当然反論を受けたりもする。

それを肯定したり否定したりを繰り返し

作品の完成度を上げていく。

時々お互いを煽ったり罵ったりするような態度をとる事もある。

これは作家のプライドをかけた戦いなのだ。

何しろガボの一言一言がとても面白い。

それだけで彼の人柄や天才が分かってしまう。

面白いから一部引用する↓

ガボ「…彼は犠牲になるように皆に求められている」

ガボ「それではかわいそうだ」

ロベルト「なんの犠牲になるんです?」

ガボ「さぁな」

→投げっぱなしジャーマンをかますガボ

ロベルト「で、最後に男は死ぬんですか」

ガボ「いや死なない」

ガボ「さっきは男をどう扱っていいかわからなかったからそう設定した」

ロベルト「僕はやはり死ぬべきだと思います」

ガボ「この映画にケチをつけるようなら追い出すぞ」

→突然ガチ切れのガボ

ガボの面白さが分かっていただけただろうか。

ぶっきらぼうだし、破天荒に感じる時もある。

けれども随所に彼のプロとしての実力や

天才的なひらめきを感じる事ができるし、

そしてこの教室自体、

彼の人柄、人望があって初めて成立するであろう事は

間違いないだろう。

ブレインストーミングの中でいくつか

作品の作り方にも言及している。

まず、作品を作る時は0から考える事。

昔から中途半端に温めている物語は完成できない。

0から順序を経てストーリーを構成する事ができれば

物語はいつか完成する。

そんなことをどこかのページで言い切っていた。

100%は認めたくない気持ちもあるが

脳みそを殴られたような衝撃を受けた。

シナリオを作る際のベースとして有りな考え方。

ありがとう、ガボ。

シナリオからは少し逸れた話だが、

彼はコロンビアのバナナ農園で起きた虐殺事件にも触れていて

ガボはこの事件を身近で感じられる場所で生活をしていたらしい。

この事件、元になった事件での被害者は数名程度だったようで

しかし気が付けば話が肥大化

大量虐殺の歴史的事件とまで言われるようになっていた

ガボは非常に驚いたようで。

真実が変わっていく様を見せつけられたのだ。

声の大きいものが話を誇張し続けた結果

史実がねじ曲がってしまった

情報の正しさなんて精査する事は難しいし

何がほんとで嘘なのさと思うけども

声の大きい者の声は嘘でも通ってしまう事がある。

しみじみと考えてさせられてしまった。

この本を読んで。

漫画や小説、創作で生活するならばそれはプロであるし

それは仕事であるし生活である。

生活である以上続けなければならない

そんな現実もひしひしと感じさせられて

いろんな意味で目が覚める本だった。

バイブルになりそうな良書だ。

物語を作りたいと思っている人ならば

一度この本を読んでみても良いのではないだろうか。

以上終わり。

読書

Posted by きかんほうさん