お話の作り方的な本を読んでいて。
それはこれで3冊目となる。
いろいろ参考になったのだが、この本だけは毛色が違う。
本書はガボ(ガルシア・マルケス)の教室で
実際に行われていたブレインストーミングの記録なのだ。
※ブレインストーミングについて知らない方は調べたし
プロの作家達がシナリオの為だけに参加する
思考の試行の至高のブレインストーミング
興味がわかないわけがない。
漫画や小説など、物語の制作は一人静かに行うものだと思っていた
自分には衝撃的な内容であった。
テーマとして、制作過程にあるストーリーを語る者を決める
それを聞いた者達が意見を述べ、あらゆる方向を模索する
この本において、注目すべきはやはりガボ。
おぼろげだがすでに形ができている
完成されかけているストーリーをガボは壊そうとする
そうする事で新たな局面を導き出そうとするのだ
「ここまできてそんな展開はないだろ!」
という意見をぶっこんでくるガボ。
当然反論を受けたりもする。
それを肯定したり否定したりを繰り返し
作品の完成度を上げていく。
時々お互いを煽ったり罵ったりするような態度をとる事もある。
これは作家のプライドをかけた戦いなのだ。
何しろガボの一言一言がとても面白い。
それだけで彼の人柄や天才が分かってしまう。
面白いから一部引用する↓
ガボ「…彼は犠牲になるように皆に求められている」
ガボ「それではかわいそうだ」
ロベルト「なんの犠牲になるんです?」
ガボ「さぁな」
→投げっぱなしジャーマンをかますガボ
ロベルト「で、最後に男は死ぬんですか」
ガボ「いや死なない」
ガボ「さっきは男をどう扱っていいかわからなかったからそう設定した」
ロベルト「僕はやはり死ぬべきだと思います」
ガボ「この映画にケチをつけるようなら追い出すぞ」
→突然ガチ切れのガボ
ガボの面白さが分かっていただけただろうか。
ぶっきらぼうだし、破天荒に感じる時もある。
けれども随所に彼のプロとしての実力や
天才的なひらめきを感じる事ができるし、
そしてこの教室自体、
彼の人柄、人望があって初めて成立するであろう事は
間違いないだろう。
ブレインストーミングの中でいくつか
作品の作り方にも言及している。
まず、作品を作る時は0から考える事。
昔から中途半端に温めている物語は完成できない。
0から順序を経てストーリーを構成する事ができれば
物語はいつか完成する。
そんなことをどこかのページで言い切っていた。
100%は認めたくない気持ちもあるが
脳みそを殴られたような衝撃を受けた。
シナリオを作る際のベースとして有りな考え方。
ありがとう、ガボ。
シナリオからは少し逸れた話だが、
彼はコロンビアのバナナ農園で起きた虐殺事件にも触れていて
ガボはこの事件を身近で感じられる場所で生活をしていたらしい。
この事件、元になった事件での被害者は数名程度だったようで
しかし気が付けば話が肥大化
大量虐殺の歴史的事件とまで言われるようになっていた
ガボは非常に驚いたようで。
真実が変わっていく様を見せつけられたのだ。
声の大きいものが話を誇張し続けた結果
史実がねじ曲がってしまった
情報の正しさなんて精査する事は難しいし
何がほんとで嘘なのさと思うけども
声の大きい者の声は嘘でも通ってしまう事がある。
しみじみと考えてさせられてしまった。
この本を読んで。
漫画や小説、創作で生活するならばそれはプロであるし
それは仕事であるし生活である。
生活である以上続けなければならない
そんな現実もひしひしと感じさせられて
いろんな意味で目が覚める本だった。
バイブルになりそうな良書だ。
物語を作りたいと思っている人ならば
一度この本を読んでみても良いのではないだろうか。
以上終わり。