漱石の「坊っちゃん」を読む

坊ちゃん,夏目漱石,読書

漱石の作品を読み始める。
有名どころ、「坊っちゃん」である。

坊っちゃん、とても読みやすくて先も気になるし、
一日で全部読んでしまった。

俺は有名作品について、奇妙な先入観を持っていたりする。
学校の授業や人から聞いた知識を半端に持っているからだろう。
坊っちゃんに関しても全く間違ったイメージを持っていた。

「金持ちのお坊っちゃんが東京の下町あたりで
半ば道楽のような生き様を見せる物語」

一体、いつ付いたんだこのイメージは…
おかげであまり面白くなさそうだと思っていた。

作中の坊っちゃんは、
元お金持ちという感じで、今はお金持ちでもない。
話の内容も、現代版半沢直樹。
時代劇といった方がわかりやすいか、水戸黄門とか。

荒くれ者の坊っちゃんは家族からは見放されていたが
女中の清にだけはとても愛され、「坊っちゃん」と呼ばれていた。

親を失い、兄が家督を継いだが
家がなくなるので一家離散、清とも別離である。

坊っちゃんは貰ったお金で物理学校に入学、
無事卒業後、四国の学校で教職につく。

悪知恵の働く教頭の赤シャツ、
取り巻きの野だ、
教頭に言われるがままの校長、狸

彼らの策略にはまり、七転八倒するのだ。

ちなみに「赤シャツ」とか「野だ」とか「狸」とかは
坊っちゃんが密かにつけたあだ名である。
作中このあだ名が使われて話が進む。

曲がった事が大嫌いな坊っちゃん。
姑息な教頭が気に入らない。
教頭は暗に、自分の取り巻きに入れ、
というようなそぶりを見せてくるが、ことごとく反発。

教頭の計略、噂話の吹聴や学生を使った嫌がらせなど
なかなかに見事なもので、坊っちゃんは
わけがわからぬまま振り回されていく。

最後には同じ数学教師の山嵐と結託して
教頭に天誅を下し、東京に帰る。

教頭の策略に振り回される辺りはなんだなんだ?と
ちょっとしたミステリー。
のちに理解者となる山嵐と坊っちゃんを対立させる辺り、
小悪党ながら、なかなかの手腕である。
おもわずフムフムと読みすすめてしまう。

最後、警察沙汰覚悟で天誅を下すんだけど、
ちょっと刺激が強く感じたのは平和ボケの証か。
不条理な悪意に対して暴力で対抗である。

しかし今、この赤シャツみたいな教頭ほんと笑えない。
いたるところでこんな人が暗躍してそうで。
ていうかいるよね?会社に何割というくらい、いるんじゃないか。
世の中、悪党の方が基本強いんだよなぁ…

現在の職責よりも法律よりも、正義を優先した教師二人。

今こんな事をしたら大バッシングで大変だ。
だが、そういうしがらみが多い現代だからこそ、
こういう真っ直ぐな人たちが必要なのかもしれない。

坊っちゃんは、結果的に仕事を追われてしまったけど、
世の中の不条理に一矢報いたのだ。

ざまーみろ赤シャツ!

しかし、この手の小賢しい悪意に対抗する
有効な手段は暴力以外にないのだろうか。
裁判だとか、一般人には死んだシステムに見えるし。
自問自答である。

読書

Posted by きかんほうさん