読書

読書感想文もついに芥川龍之介に突入しました。
太宰も大好き芥川。
お題は有名な「羅生門」。

生活に困った下人が、羅生門で雨宿り。
場所や天気も相まってか、おセンチな気分になっていた。

羅生門は天災続きで朽ち果て、廃墟の様相。
雰囲気のある場所は、自然と似た雰囲気のある者をひきつける。
こと羅生門に関しては、浮浪者、犯罪者の類だ。

果ては死体の投げ捨て場。
羅生門はカラスが死体を漁るおぞましい場所になっていた。

そんな場所で雨宿りし、
生きる為に犯罪に手を染める算段を思いつく下人。
しかしきっかけを得られず、尻込みしていた。

とりあえず安全に寝られる場所を探し、
羅生門の上に続く梯子を見つける。
楼(たかどの)に行くと、そこは死体の山であった。

その中に生きている老婆が居た。
この老婆とのやり取りが本作品の肝である。
老婆は死体の髪を引っこ抜いていた。
その理由を下人は問う。

「この髪でカツラをつくんのよ」
「ワシこれやらんと餓死するし!」
「この死体の主は生活の為に人を騙して一儲けしてたのさ」
「だからワシの行動にも理解を示すじゃろ!な?」

下人「・・・」

とんだ死神ババァである。
下人はおそらく、もっと感銘を受けるような、
悪意を憎悪、嫌悪できるような綺麗な理由が聞きたかったのだ。
自らの考えを否定したかったのだ。
だが答えはあまりにも下卑たものだった。

下人は老婆の身包みを剥ぐ事にした。

「そういう理屈なら俺がオメーの身包み剥いでもいいよね?」
「ワシこれやらんと餓死するし!」
「納得しろオラァ」

というお話。

悪意の連鎖。
善意を、正当性を人に求める弱さ。

自身は、生きる為に悪に手を染める。

直前、下人の心には葛藤があり、善と悪を天秤にかけている。
どこかに善意を見出したかったのだ。
踏み留まりたかったのだ。

誰かに救いを求めた。

だが結局は他人の悪意に流されてしまうのである。

もしもこの老婆の行動に誰もが納得できる
綺麗な理由、正当性があったとしたら
それを聞いた下人は悪を嫌悪し踏みとどまったかもしれない。
だが現実はそうではなかった。

悪意に負けた瞬間である。

世の中には数多の物語があって。
羅生門とは逆の道を辿る話もたくさんあるだろう。
この違いはなんだろうか。

自問自答である。