芥川の「玄鶴山房」を読む

玄鶴山房,芥川龍之介,読書

独特な佇まいの家
「玄鶴山房」内の人間模様が書かれている。

まず、この家の主人、玄鶴。
病床につき余命幾ばくか。

そしてその妻、お鳥。
なんと腰が砕けている。要介護。

お鳥の娘、お鈴とその旦那の重吉、息子の武夫。
そして玄鶴の面倒を見ている看護婦の甲野。

上記6名に玄鶴の内縁の妻、お芳と
その息子、文太郎を加えた家族が織り成す
絶望のハーモニー(死

玄鶴が危篤となり、別居していたお芳が看病にやってくる。
そしてさまざまな歪が顕著になっていく。

玄鶴は若いときに遊びたいように遊んだようだ。
お鳥という妻が居ながら若い女、お芳を囲い
孕ませた、まである。

その事実は当然、お鳥の嫉妬心を煽るのである。
そしてそのやり場のない嫉妬心は、
自分の娘お鈴の旦那、重吉に飛び火する。

重吉はあまり気にするでもなく受け流すが
重吉の妻のお鈴はお鳥とお芳の板ばさみになり難儀する。
息子の武夫は武夫で、お芳と玄鶴の息子、
文太郎をいじめる。

それら全ての問題に、玄鶴は病床におりながらも
頭を悩ませる。
一時は悩みの種であったお芳と息子を
死ねばいいとさえ思っていた玄鶴であったが。
夢に見るのは若い頃のお芳であった。

お鳥は良いとこの娘で器量良しを期待して
結婚したに過ぎなかったらしい。

そんな玄鶴山房内の人間模様を、
フカンで冷笑しながら楽しむ女が居た。
看護婦の甲野だ。

お鳥にはお芳の悪口をいい、
お芳にはお鳥の悪口を言う事で反応を楽しんでいた。
さらに重吉にその気がある様な態度を見せ
お鈴や重吉の反応を見たり…
玄鶴山房内の人間模様をコントロールすることで
愉悦に浸っている甲野。

それに直感的に気がついているっぽいのが重吉。
玄鶴と甲野は普段、離れに居たが
外にまでするはずのない病気の匂いが嫌いで
重吉はあまり離れに近寄らなかった。

たぶんいろんな意味で臭い、甲野に気がついていたのだろう。
つうか甲野が臭気を出している。間違いない。

それを知ってか知らずか、甲野の前で
なんだか笑い始める玄鶴。
策を練り、ふんどしを用意してもらい
そのふんどしで自害を狙ったようなのだが
それすらできないほどに衰退していた。

まあ気にせずともすぐに死ぬのだが。

そして玄鶴の葬式。
全てを終え帰路に着く重吉。
最後にお芳が会釈しているのが見えたようだ。

それを「なんでもねーことだぁ」

と気にすることもない重吉。

甲野のような人間が1人入るだけで
平和なはずの家庭さえおかしくなりかねないという恐怖と

世間的には認められなくてもそれは真実の愛!なのか?
最近の不倫騒動に一石を投じる作品…
と言いたいところなのだが、

あれ、これでオワリ?

なんかもう一転あるんじゃないかと期待してしまった作品。
消化不良のような…
そういう作品はなんとなく読み返してみるのだが
同じ結論に至ったので、こんな感想でいいや…
芥川先生ごめんなさい。

オワリ。

読書

Posted by きかんほうさん