芥川の「一塊の土」を読む

一塊の土,芥川龍之介,読書

一塊の土。

老婆、お住は息子夫婦と暮らしていたが、
息子は若くして亡くなってしまう。
しかし、お住にとって息子の死は悲しみばかりではない。
暗雲を抜けたような安心感すらあったのだった。

そして、嫁とその子供と3人暮らしが始まる。

お住は時を待って、嫁のお民に婿を取らせ
以前のように養ってもえばよいと思っていた。
ところがこのお民、一向に婿を迎える様子がない。

それどころか一念発起。
一家を守るためがむしゃらに働き始めるのである。
そんなお民を見た周囲の者は
お民に尊敬の念すら持つようになる。

お住も、最初はお民を褒め称えていた。
しばらくお民のサポートに回っていたのだが、
居心地の悪さを感じ始める。

お民は仕事の範囲を広げ始めてしまい、
老婆であるお住ではサポートさえ難しくなっていったのだ。
「無理に手伝わんでいい」というお民。

しかし、部屋でごろごろしていては
居心地が悪くなるばかり。
どうにか、お民の仕事病を止め、
婿を取らせようとするお住。

ここに摩擦が生まれ始める。
お民は自ら働くことで家を守ろうとしている。
お住は自分を守るためにお民に婿をやろうとしている。

そして口論が増えていくのだ。
お民という優秀な娘が名声を得て表彰されるまでになると
お住の居心地の悪さはMAXに達していた。

だが、そんなお民もある日、病死してしまう。
残されたお住は…

そう、お住にとってお民の死は悲しみばかりではない。
暗雲を抜けたような安心感すらあったのだった。

お民が残した財産でしばらく生活には困らない。
子供の面倒も見ていけるだろう。
しかしお住はここでようやく気がつくのだ。

「息子が死んだ時と同じじゃん…」

この物語、どのように思っただろう。

お住は悪い人だろうか。
否。まったく普通の老婆である。
ではお民は?
否。よくできた嫁である。
誰も悪くないのだが、すれ違いが生じ、摩擦が生まれた。

それぞれにもっと
相手を労わる事ができれば
もっとストレスのない生活ができたのだろうか。

否。私はこんな程度が普通と思う。
これはごく普通の、現代でもよくある家庭のヒトコマ。

家族というシガラミの物語である。
うわーん。

オワリ。

読書

Posted by きかんほうさん