芥川の「藪の中」を読む

芥川龍之介,藪の中,読書

芥川の「藪の中」。

実は芥川の作品でもっとも読んでみたかった作品。

「真相は藪の中」という言葉の元になった作品である。

興味がわかないわけがない。

 

この物語は、1つの殺人事件を中心に

7人の人間の証言からなる物語である。

 

1人目、通りすがりのきこりの証言

「今朝な!死体見た!胸元に一傷だべ」

「場が随分踏み荒らされていたから一悶着あったんじゃね」

 

2人目、旅の法師の証言

「死体の男ならば先日の昼頃みた」

「白馬に乗った女と一緒に、関山の方へ歩いていった」

 

3人目、犯人を捕らえた人の証言

「昨夜の午後八時頃、犯人の多襄丸を捕縛した」

「白馬から落馬して苦しんでいた」

 

4人目、馬に乗った女の母親の証言

「男の名は金沢武弘、女はその妻の真砂で、自分の娘じゃ」

「昨日、若狭に向かった」

 

5人目、殺人事件の犯人である盗人、多襄丸の証言

「女を手ごめにした後、女を掛けて男と決闘した」

「男殺して勝ったけど女いなくなってやんの!」

 

6人目、清水寺にいた女の証言

「盗人に手ごめにされて夫と心中しようとして刺した」

「自分は死にきれませんですた」

 

7人目、殺された旦那の証言(イタコ経由)

「妻は盗人に汚されたあと盗人に口説かれてOKした」

「そして盗人に俺を殺してくれと頼んだ」

「盗人は引いて、妻を殺していいかって問いかけてきた」

「妻逃亡!盗人も俺の縄を一本だけ切って消えた」

「小刀が落ちてたんで胸に刺して自害した」

「そのあと誰かが小刀を抜いて血が一気に噴出した」

「誰がそうしたのかはわからない」

 

 

だいぶ簡略化しているが、つまり

この証言者達の証言にはいくつかの矛盾があるのである。

 

この物語についてこれまでさまざまな議論がなされ

真相を究明しようという流れもあったようなのだが

 

捕まってもう極刑にしてくれと言う多襄丸と

罪を認め寺で懺悔している女、

そして殺された男の証言さえ食い違っている。

 

それぞれの価値観には相違があり

それぞれに言いたくない事実があるが

最後の最後だからこそ、事実を曲げてまで

通したい意地があるのだろう

 

3人が3人とも

人間の醜い本性を垣間見てしまったが為に

それを隠すことで自分を守っているのだ。

 

故に隠された真相とは、

 

「恐ろしく醜い人間の本性」

 

あると思います。

オワリ。

読書

Posted by きかんほうさん