芥川の「或日の大石内蔵助」を読む

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続けて芥川。
「或日の大石内蔵助」を読んだ。

忠臣蔵で有名な大石内蔵助。

年末のドラマスペシャルで何回も放映されている
忠臣蔵。
子供の頃は宮本武蔵が好きだったかな。
大人になったら赤穂浪士の方が好みになっていた。

必殺仕事人や大江戸操作網や剣客商売の方が好きだけど。

この作品は吉良邸への討ち入り後、
赤穂浪士への対応が幕府で協議されている間、
細川家でお預かりの身となっている大石内蔵助の話である。

春めいた日に借りた書物を読んでいる大石内蔵助。
周囲には志を供にした赤穂浪士もいる。

大石内蔵助と仲間は偉業の達成に満足していた。
そして再び春を迎える事ができた喜びをわかち合っていた。

そこへ、細川家の家臣で赤穂浪士の世話を焼いている
堀内伝右衛門がやってきて、街の噂話を聞かせる。

「江戸中で仇討ちが流行っている」

討ち入りの影響やいかに。
この話を聞いて悪い気はしない赤穂浪士達だったが
大石内蔵助だけは怪訝な顔をしていた。

偉業を成し遂げた赤穂浪士達と
江戸の庶民を一緒にするなと持ち上げる
そんな論調の会話がなんとなく不快だったようだ。

その話が他の義士にも伝播する。
不快な大石内蔵助は流れを変えようと
身内の恥を伝えてみる。

「赤穂の者にだって、同盟を抜けた者もいるし!」

大石内蔵助は話の流れを変えたかっただけなのだが
このセリフからまた、会話は思わぬ方向へ迷走する。

「裏切り者許すまじ」
「我らとは違う」

どうも、何を言っても自分達を棚に上げてしまうようだ。
そんな会話に嫌気が差した大石内蔵助。

それもまた仕方ないと感じていた大石内蔵助にとって
糾弾するなど考えるべくもなかったのだが。

場にとどまるも、言葉少なく。

この物語の大石内蔵助、彼は高潔なのだ。
世の中を冷静に、公平に見ることのできる眼を持つ。
だからこその討ち入りだったのかもしれない。

しかし事が終わってしまえば、
命がけで戦った同士でさえ、
自分とは違う考えや価値観を持っていることに気が付いて
一抹の寂しさを身に宿すのであった。

英雄とは孤高なのだ。
時に苛烈に、世の流れを変えることもあるが。
誰とも相容れず、孤独。

そこがまたかっこいいのだけれど。
上流の都合。
結局、切腹を命じられて終わるわけだから。
世の中にはもう少し、遊びがあってもいいのに。

以上オワリ。

読書

Posted by きかんほうさん