太宰の「ダス・ゲマイネ」を読む

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太宰治の作品、「ダス・ゲマイネ」を読んだ。

ダス・ゲマイネとは太宰の造語のようで
ドイツ語と津軽弁をかけたもの。
「一般的なもの」「だから・だめだ」という意味を持つらしい。

物語は馬場と言う男を中心に話は進む。
風貌から何から何まで虚飾に紛れた男。

知識はあるので会話は弾むがその実、身が無い。
というか、合えて身を紛らせているのかもしれない。
そんな風に感じさせる男。

主人公、通称「佐野次郎」は彼と居るうちに、共感を得てしまう。

馬場は、自ら一歩踏み出そうと仲間を集める。
選り好みせず、実力だけを頼りに集めた仲間。

その中に佐竹と言う男が居た。
馬場の存在を否定する男である。
佐野次郎は、佐竹から馬場の悪口を聞いてしまう。

しかし、佐野次郎は揺るがなかった。

馬場が集めた仲間がもう一人居た。
太宰治だ。
なんと作者が同姓同名で登場してしまう。

しかし彼は、佐竹の話を聞き、馬場を拒絶してしまう。

おそらくだが、主人公の佐野次郎も、太宰自身なのだ。
同一人物がそれぞれ違う立場から違う視点をもち違う結論に至る。
これはそんなお話なのだ。

また太宰自身の話だった!

ダス・ゲマイネを読んで、太宰末期の作品なのではと勘違いをした。
作家として、初期の作品をだした頃から
彼にはこんな葛藤があったのだとわかった。

作家としての生みの苦しみ。
作家としての肩書き。
そんなものとの板ばさみ。

耳が痛くなる話だった。
俺は作家じゃないけど、かつて漫画家を目指していた事もある。
ところが作品を全く仕上げることができず、非常に苦しんだ。
その経験は今だにひきづっている。
生み出せない病とでも言おうか。
どつぼにはまると身動きが取れなくなる自分がいる。

この物語の結末のようにならん為にも一皮剥けたい所だ。

読書

Posted by きかんほうさん