太宰の「桜桃」を読む

太宰治,桜桃,読書

太宰の「桜桃」を読んだ。短編小説である。
これまで読んできた太宰の作品の中でもっとも短い。
30分かからず読むことができた。

日本のある家族の物語。
妻は家事に育児に追われ、夫は仕事に追われていた。
しかし互いに思いは一つ。

「家族の為に」

同じ思いを共有していたはずなのに
いつの間にか、すれ違いが生じていたらしい。
妻は生活の辛さから、たった一言だけ愚痴をもらしてしまう。
夫にだけ通じる愚痴を。

夫は静かに悟り、諭すように強がりを言う。
そしてその場の空気に居たたまれない気持ちになり、
逃げ出すのだ。

男の聖域、居酒屋に!!!
※昨今は女性もたくさんいます、すいません

高価な桜桃をつまみながら、
「俺だってさ…」と家族に対してあれこれ思いを巡らせる
こんな贅沢を家族にゃしてあげられないけど
でも俺だって面白くもなんともねーんだよ…

という内容で幕を閉じる。
なんだか現在でもよくある家庭の事情というか。

「賢者の贈り物」というお話をご存知だろうか

夫は妻の為に時計を売って髪留めを、
妻は夫の為に髪を売って時計のバンドを、
それぞれにプレゼントする話だ。

お互いのプレゼントはすれ違ってしまったけど、
でも意味はあった。
お互いを思えばこそという、微笑ましい美談。

しかしこの桜桃には、
太宰の話には、最後に理解しあえる部分が無い。
似ているようで、全く違う結末なのである。

すれ違ったまま。

でも、往々にしてそんなもの。
お互いを理解しあうなんて、なんと難しい事だろうか。

これまで、太宰の作品をいくらか読んで来た。
人間失格にしても、斜陽にしても、今回の桜桃にしても
太宰自身の体験が盛り込まれているのだろう。
その為にリアリティのあるお話になっているのだが、
まかり間違えば大人の作文と、言えなくも無いかもしれない。

でもそれを文学にまで昇華してしまったのだから、
やはり太宰って凄いのかな。

実は太宰の本は一冊しか持っていない。
文春文庫から出ている
「斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス、外七篇」
という本である。
タイトルから、有名どころはほとんど読んでしまった。
外七篇とは、そのほかに7つの作品が入っているという事である。
さて次は何を読もうか。

漱石も読みたいんだけど、いつになることやら。

読書

Posted by きかんほうさん