読書

太宰の「満願」を読んだ。

なんとページ数にして2ページ半。
これまで読んだ短編の中でも特に短い。

夏休みはあと1日、宿題の読書感想文だけが残ってる!
そんな小中学生にお勧めしたい。

ただしそれだけの感想が捻出できるかどうかは
あなたの腕次第である。
感想文の方が文字数が増える可能性までもある。

酔っ払って怪我をした「私」が病院に行くと
酔っ払った医師が出てきた。思わず笑う二人。

怪我の治療。
いや医者と談話をするために、いや新聞を読むために。
通院する「私」。

ある日、病院で若い婦人を見かける。
旦那が肺を患っているらしい。

医師が「もう少しの辛抱ですよ」と
今が一番大事ですよと、固く禁じる。

旦那の肺はめきめき良くなり
最後は医師からお許しが出て、楽しそうに病院を後にする婦人。

というお話なのだが
肝心な部分がすっぽり抜けている。
医師が何を禁じていたのか、何も書かれていないのである。
読者の想像にお任せする、という事だろうか。

俺は思う。
この医師の処方する薬はおいしいのだ。
至高の一品、究極かもしれない。
でも旦那さん用だから奥さん飲まないでね。

なんとこの薬は満願全席よりおいしいのであった。
満漢全席だけどね

こうしてタイトルという伏線も回収。
めでたしめでたし。

なんつっ亭。

読書

太宰治の作品、「ダス・ゲマイネ」を読んだ。

ダス・ゲマイネとは太宰の造語のようで
ドイツ語と津軽弁をかけたもの。
「一般的なもの」「だから・だめだ」という意味を持つらしい。

物語は馬場と言う男を中心に話は進む。
風貌から何から何まで虚飾に紛れた男。

知識はあるので会話は弾むがその実、身が無い。
というか、合えて身を紛らせているのかもしれない。
そんな風に感じさせる男。

主人公、通称「佐野次郎」は彼と居るうちに、共感を得てしまう。

馬場は、自ら一歩踏み出そうと仲間を集める。
選り好みせず、実力だけを頼りに集めた仲間。

その中に佐竹と言う男が居た。
馬場の存在を否定する男である。
佐野次郎は、佐竹から馬場の悪口を聞いてしまう。

しかし、佐野次郎は揺るがなかった。

馬場が集めた仲間がもう一人居た。
太宰治だ。
なんと作者が同姓同名で登場してしまう。

しかし彼は、佐竹の話を聞き、馬場を拒絶してしまう。

おそらくだが、主人公の佐野次郎も、太宰自身なのだ。
同一人物がそれぞれ違う立場から違う視点をもち違う結論に至る。
これはそんなお話なのだ。

また太宰自身の話だった!

ダス・ゲマイネを読んで、太宰末期の作品なのではと勘違いをした。
作家として、初期の作品をだした頃から
彼にはこんな葛藤があったのだとわかった。

作家としての生みの苦しみ。
作家としての肩書き。
そんなものとの板ばさみ。

耳が痛くなる話だった。
俺は作家じゃないけど、かつて漫画家を目指していた事もある。
ところが作品を全く仕上げることができず、非常に苦しんだ。
その経験は今だにひきづっている。
生み出せない病とでも言おうか。
どつぼにはまると身動きが取れなくなる自分がいる。

この物語の結末のようにならん為にも一皮剥けたい所だ。

読書

太宰の「桜桃」を読んだ。短編小説である。
これまで読んできた太宰の作品の中でもっとも短い。
30分かからず読むことができた。

日本のある家族の物語。
妻は家事に育児に追われ、夫は仕事に追われていた。
しかし互いに思いは一つ。

「家族の為に」

同じ思いを共有していたはずなのに
いつの間にか、すれ違いが生じていたらしい。
妻は生活の辛さから、たった一言だけ愚痴をもらしてしまう。
夫にだけ通じる愚痴を。

夫は静かに悟り、諭すように強がりを言う。
そしてその場の空気に居たたまれない気持ちになり、
逃げ出すのだ。

男の聖域、居酒屋に!!!
※昨今は女性もたくさんいます、すいません

高価な桜桃をつまみながら、
「俺だってさ…」と家族に対してあれこれ思いを巡らせる
こんな贅沢を家族にゃしてあげられないけど
でも俺だって面白くもなんともねーんだよ…

という内容で幕を閉じる。
なんだか現在でもよくある家庭の事情というか。

「賢者の贈り物」というお話をご存知だろうか

夫は妻の為に時計を売って髪留めを、
妻は夫の為に髪を売って時計のバンドを、
それぞれにプレゼントする話だ。

お互いのプレゼントはすれ違ってしまったけど、
でも意味はあった。
お互いを思えばこそという、微笑ましい美談。

しかしこの桜桃には、
太宰の話には、最後に理解しあえる部分が無い。
似ているようで、全く違う結末なのである。

すれ違ったまま。

でも、往々にしてそんなもの。
お互いを理解しあうなんて、なんと難しい事だろうか。

これまで、太宰の作品をいくらか読んで来た。
人間失格にしても、斜陽にしても、今回の桜桃にしても
太宰自身の体験が盛り込まれているのだろう。
その為にリアリティのあるお話になっているのだが、
まかり間違えば大人の作文と、言えなくも無いかもしれない。

でもそれを文学にまで昇華してしまったのだから、
やはり太宰って凄いのかな。

実は太宰の本は一冊しか持っていない。
文春文庫から出ている
「斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス、外七篇」
という本である。
タイトルから、有名どころはほとんど読んでしまった。
外七篇とは、そのほかに7つの作品が入っているという事である。
さて次は何を読もうか。

漱石も読みたいんだけど、いつになることやら。

読書

今日は一日岩盤浴にいた。
空いていた時間で、太宰の「斜陽」を読んだ。

戦争で稼ぎ頭を失い、バラバラになっていく没落貴族の話。
蓄えだけでしばらく過ごすが、女中を雇っているような大所帯。
長く維持できるはずもなく…
それでも母親の存在が家庭を維持していた。

しかし程なくして、母親も病死。
残された家族は、いよいよどうしようもなくなっていく

娘であるかず子は、密かな恋に救いを求めていく。
そして、弟の長治もまた、人知れず恋に焦がれていた。

正反対なようで、似たような感情に救いを見出していた二人。
女は、恋を愛にまで昇華することで、
1人でも生きていく強さを身につける
男は、数々の矛盾を抱えたまま、自ら道を閉ざすのである。
人間失格と同じく、あまり良い結末とは言えないかもしれない。

作中、この言葉が酷く印象に残る

「人間は皆、同じものだ」

傷ついた人間を慰めるように使われる、普遍的な言葉。
作中の長治は、この言葉を酷く嫌う。皆同じであるものか、と。

普通の定義はあいまいである。
普通の範囲とはいか程か。誰も答えがわからないのに、
社会において「普通」とは、もはや崇拝に近い言葉で使われる。
だがそれは、人の立場によって多様に変化してしまう。

自らを「普通以下である」と、自覚している人間に対して、

「人間は皆、同じものだ」

という言葉を吐いたなら、それはどのように受け止められるだろう。
重圧になるのではないだろうか。
自らの低い立場を自覚し、普通を求めて、同じを求めて、
上を目指して高みを目指して、底辺からの努力を余儀なくされる。
それはとても辛い事なのではないだろうか

自らを「普通以上である」と自覚していた人間に対して、

「人間は皆、同じものだ」

という言葉を吐いたなら、それはどのように受け止められるだろう。
落ちぶれたという絶望感しか与えないのではないだろうか。
救いを求められる立場から、救いを求める立場に落ちた絶望感。
傲慢な自分を自覚しつつも、元上流であると蔑まれ、
普通に馴染めず、絶望するのではないだろうか。

慰めに使われる言葉なのに、その意味を成さない。
上辺だけの偽善的な言葉。
作中の長治が、太宰が、嫌悪感を抱くのも無理はないと
共感してしまった。

これまで、自分が吐く言葉に対して、
それほど深い疑念を持つことはなかった。
言葉は当たり前のように、条件反射のように発せられる。
相手も同じ意味合いで受け取ってくれると、勝手な期待を乗せて。

しかし、もし、話し手と聞き手が
全く違う意味合いで言葉を理解していたら。
それは会話と言えるのだろうか。
なんだか怖くなってしまった。

会話にはリズムがある、テンポがある。
それらを維持しつつ、最適な言葉を選んで会話する。

あ~~~~~~~~~~
そんなん無理じゃん~~~~~~~
難しいよ~~~~~~~~~~~~~~~~~
あへあへ

電池が切れた。終わり。

読書

太宰治の「走れメロス」を読んだ。

子供の頃に国語の教科書か何かで読んだが、
内容は殆ど覚えていなかった。

結論から言うと凄く面白かった。感動した。
読み終わった後、軽く涙が浮かんでいた程である。

小学生の頃の夏休みの宿題、
読書感想文の作品に宮沢賢治を選んだ

「銀河鉄道の夜」だ。

理由はタイトルが面白そうだった。
あと表紙の絵がかっこよかった。
しかし当時小学生だった自分には
え?ジョバンニ?え?猫?ぐらいの理解度。

内容を全く理解でないまま作文を書いたが
ここがわからないよ!あとここも!
全部わかんないばか!みたいな感じだったと思う。
今読んだらまた違うのかもしれないが。
(ファンの皆様ごめんなさい)

あの時なぜ、メロスを選ばなかったのだろう。
手に取るチャンスは与えられていたのに。
と、今更後悔してしまうほどメロスは良い作品だった。

「メロスは激怒した」

冒頭から激怒しているメロス。
訪れた街で邪智暴虐の王の圧政を知り
胸に短剣を隠して

「今すぐ王様殺してくるわ」

こんな危険な男いるだろうか。

このメロス、直情的なその性格とは裏腹に
職業は村の牧人、羊と遊んで暮らしているらしい。

納得である。
そのくらい平和な環境じゃないとこの人生きていけない。
現在日本にこんな男がいたら即豚箱行きである。

まぁこの世界でもお城に入ってすぐ捕まります。
作戦とかないんで。
そこで邪智暴虐の王に会うことができ、会話を交わす。

王様 「人が信じられぬのだぁ」
メロス「信じられぬとは何事だぁ」

王様はメロスを殺そうとするが
少しだけメロスに情をかける仕草を見せる。
そしてメロスは思い出す

「あ、妹の結婚式あるんだった」
「お友達のセリヌンデウス置いてくから死刑3日まって」
「帰ってこなかったら殺っていい」

そうして、メロスは走るのである。
途中、自分の心の弱さに挫けそうになる時もある。
王様からの妨害もある。
「もう諦めろ」という声まである。

それらを全部振り切りながら。

自ら殺される為に走る!友の信頼に応える為に。
王にそれを見せつける為に。

なにか、胸にぐっと来るものがあった。
太宰すごいなぁ。

かっこいいよメロス!!!

なお、この文中のメロスのセリフには
きかんほうさんの適当フィルターがかかっている為
実際のセリフとは異なります。